比較できない最初の選択
零は強制されず、自分で将棋を居場所の理由にした。しかし退路のない場で算出した選択と、選択肢のある場で望むことは同じではない。十歳へ戻り、将棋を条件としない家で育った自分を試すこともできず、「本当に好きか」を照合する対照群はない。だから始まりの自発性だけから、今の将棋の所有者を決められない。
三人と一人の対照
二海堂は病気も家の事情も将棋を不要にするのに、全力で続ける。香子は望んだ道を外から閉じられ、空いた場所を埋められない。島田は宗谷へ届かない可能性を知りながら進む。最高位の宗谷は将棋の内側だけで存在するように見える。作品は、割り当てられず続ける者、奪われた者、届かなくても追う者、全てを注ぐ者を順位づけない。
将棋以外の座標
零には、棋力を求めない川本家、研究と食事を共にする二海堂、盤外の相談をする林田、高校生活、ひなたとの関係が増える。居場所を得る手段が将棋一つだった頃と違い、複数の世界から自分を見られる。さらに、ひなたのための費用を得ようと対局する。将棋が生存条件から、別の目的へ届く自分の技法へ変わり始める。
答えの代わりに続いている
作品は零に「将棋が自分のものになった」と宣言させず、一度離れて戻る分かりやすい証明も与えない。必要がなくなった後も彼は指し、棋風や敗北の意味が具体的になる。最後にあるのは、十歳の子が一人で居場所の代価を差し出す像と、十九歳の零がひなたを迎えに行き、春の光の中を学校へ向かう二つの影だ。所有の答えは、その間で開いたまま残る。
対象作品: Chica Umino / Shaft, March Comes in Like a Lion. TVアニメ第1・第2期を主要テキストに、羽海野チカの原作漫画を参照しながら、家族・将棋・学校・ケアを読む独立した日本語批評です。