嘘のない待機
田舎から来た男は、開いた門の前で門番に「今は入れない」と言われ、椅子に座って一生待つ。門番は嘘をつかず、扉を閉めず、試すなら入れとも言い、贈り物も心残りをなくすためだと受け取る。明白な加害者がいないまま、男の生涯だけが門前で尽きる。
許可する者を作った質問
男の誤りは臆病ではなく、「入れるか」の答えを門番へ渡したことにある。「今は」と言われれば、日付のない未来を待ち続けられる。しかも門は彼一人のために開かれていた。誰も代わりに決める資格を持たない入口で、質問した本人が相手へ資格を与えてしまった。
Kの開いた出口
Kも弁護士、画家、レニ、聖職者へ「どうすれば放免されるか」を問い続け、自分へ「無視したらどうなるか」とは問わない。法廷は彼を押さえず、事件があると宣言して立っているだけだった。外へ出る許可が必要だと信じた瞬間、開いた出口は、許可を発行しない制度の所有物に見える。
処刑への協力と残る恥
三十一歳の前夜、二人の男に迎えられたKは抵抗を考えながら服を着て同行し、途中から道まで選ぶ。採石場では二人が屠殺用の刃物を譲り合い、彼は自分で受け取る責任を感じる。最後まで罪名を知らず「犬のように」死ぬ。恥は彼の罪ではなく、説明せず人を処理できた世界の側に残る。
対象作品: Franz Kafka, The Trial. 死後刊行されたカフカの未完長篇を主要テキストに、手続・自由・自己拘束を読む独立した日本語批評です。