「ただ上知と下愚とは移らず」は、人間には生まれつき変わらない上等と下等がいる、という身分論に使われてきた。しかし直前には、人の性は近く、習慣によって遠くなる、とある。二つを並べると、単純な階級表は作りにくい。

後の一句を文字どおり絶対化すれば、前の一句はほとんど意味を失う。逆に前を軸にすれば、最高の知者と最低の愚者は現実の固定階級ではなく、変化を拒む極端な型、あるいは後世の挿入かもしれない。証拠は一つに決めきれない。

ここで大切なのは、都合の悪い文を偽物と宣言することではない。一章だけで孔子を裁く前に隣を見る習慣だ。文章は配置によって互いを制限する。引用が完璧に主張を支えるときほど、前後の声を戻してみたい。

中国語・英語版を基に、日本語の読者に向けて独立に書き直したエッセイ。詳細な論証はシリーズ末尾の研究版を参照。